サロメの乳母の話10 塩野七生
- 作者: 塩野七生
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/03/28
- メディア: 文庫
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第10話「ネロ皇帝の双子の兄」
〜ネロ〜 世界史小事典
37〜68(在位54〜68) ローマ皇帝。
治世の初期5年間は近衛都督ブルス、哲人セネカの後見で善政をしいたが、前者が病死し、後者が引退後、暴虐の性格を現し、母・妻を殺害した。
64年のローマ市の大火の罪をキリスト教徒に帰して迫害した。
芸術を愛好しギリシアに旅行、競技に出場した。
ガリアの反乱に端を発し、元老院、近衛兵に見捨てられ、ローマから脱出、自殺した。
〜セネカ〜 世界史小事典
前4〜65 古代ローマ帝政期のストア派哲学者。
コルドバの生まれ。ネロの師。最後はネロに自殺を強要された。多作の人で、同情、穏和、世界市民主義、人間愛などがその中心を流れる宗教的色彩の濃い道徳的教訓を説いた。
実生活ではローマ屈指の大富豪でもあった。
著者「幸福な生活について」など。
〜元老院〜 世界史小事典
古代ローマの最高諮問機関。
伝承ではロムルスが設置したといわれるが、建国当初から存在したと推定される。
議員の定員は共和政初期には300、のちに600(一時900)、任期は終身。
始めパトリキのみ、のちにプレブスにも道が開け、前3世紀から財務官(高級官僚の最下位)が任期終了後選ばれて議員となったため、実質的な支配機関を構成した。
年齢制限、のちには財産資格があった。
帝政期には権限は縮小し、ディオクレティアヌス帝以後は名誉的称号と化した。
現在の政治家には基本的に任期がある。
もしも国民にとって、国家とって不適格であると判断されると、次の当選は出来なくなる。
これは当たり前のことに思ってしまうが、実に画期的なシステムである。
民主主義思想が出てくる以前は、王にしろ、皇帝にしろ、終身制である。
もしも国家にとって不適格と判断されても、政権を奪われることはない。
ならばどうするのか。
殺すしかないのである。
どのような形にしろ組織には、指導者には浄化作用が働くように構成しておかなければ命が危ぶまれるのである。
とは言え、命を懸けるほどの気概があってしかるべきという思いもしてしまうが……
話をネロに移すが、確かに彼は暴君であったのは間違いない。
しかし敵国パルティアとの外交では成功しているし、ローマ大火での陣頭指揮も非凡なものを見せたとも言われる。
キリスト教徒に火事の責任を押し付けたことは確かに人道的に悪だが、これは後世がキリスト教社会になったから、未来から糾弾されているという一面もある。
当時のキリスト教徒は、国家ローマでの兵役や、納税の義務を果たさず、ひたすら神の国が訪れるのを願う、つまりローマが滅ぶことを待ち望んでいた者達なのだ。
まあ、弾圧は人道的には悪だが、キリスト教徒にも大いに問題があったことも事実なので、多少ネロの評価に同情の余地はある。
その同情をもとにこの小説が作られたのかな?