井沢元彦 / 英傑の日本史 新撰組・幕末編
脱走というのは軍隊における最大の罪である。
《中略》
ジェンキンス問題がそれだ。
民主主義国家における国民は基本的人権がある。
だから戦うことを強制されない。
しかし、それでは国民の生命財産を守ることができないので、まともな国家は国民に対する「サービス」として、いざとなったら戦ってくれる人間を養成しておく。
これが軍隊だ。
しかし問題は彼等も国民の一員であり、基本的人権を持っていることだ。
だが戦いの最中にそんなものを振り回されたら、戦うことはできない。
だから軍人には軍人だけの特別に厳しい法律がある。
それが軍法だ。
軍人というのは軍法を守ることを誓約して軍隊に加入した人間と定義してもいい。
その最大の約束事は「逃げない」ということだ。
「逃げる自由」を認めたら軍隊はあっという間に崩壊する。
だから脱走罪は最大の罪なのである。
その最大の罪を「許してやってくれ」とブッシュ大統領に頼んでいるのが、わが小泉総理だ。
これは相手がミッテラン大統領だろうがフセインだろうが、絶対に認めない。
認めたら、その国は滅亡するくらいの重い案件なのだ。
軍事常識の無さにも困ったものである。
井沢元彦 著 英傑の日本史 新撰組・幕末編 ジュール・ブリュネの項
言われてみれば当然のことだなと、正直思ったので、控えてみた。
このジュール・ブリュネは映画ラストサムライのオルグレン大尉がモチーフなのか?というくらい幕末時の行動に類似性がある。
「紀伝体」と「編年体」というのをご存知だろうか?
歴史を学習して行く上で、大きく二つに分かれる題材なのだが「紀伝体」と言うのは歴史上の「人物」にスポットを当てて、その「人物」の経歴や所業を追っていくというもので、対する「編年体」というのは所謂歴史上で起こった出来事を年代順に追っていくというものだ。
どちらが優れているとかという問題ではなく「紀伝体」は、偉人たち一人一人を追っていくので、歴史の醍醐味である「人間」に迫ることができる。
しかし、「人物」と「人物」の関連や相関が多少分かりにくくなるのが難点である。
対して「編年体」では歴史上の出来事を年代で追っていくので、流れや相関は分かりやすいが「人物」の業績や功績が曖昧になったままで理解したつもりになってしまうということになる。
学校の教科書は「編年体」である。
この「英傑の日本史」シリーズは体裁は「紀伝体」方式で、67人の人物を紹介しているのだが、通して読んで行くと実は「編年体」形式のような編集となっており、あまり「人物」の生まれから終わりまでをツラツラと語っているわけではない。
なので、「紀伝体」のデメリットをあまり感じない。
しかも読みやすい。
今まで様々な幕末関連の書籍を読んだが、これを読んでようやく理解できたことが多々出てきた。
「尊王」「佐幕」「攘夷」「開国」……いろいろ便利な言葉が幕末には出てくるが、これらの言葉でカテゴライズしていると、分かるものも分からなくなる。
それを分からせてくれるのが嬉しい。
幕末を楽しむには、まずこれを読むのが一番かな。