キングアーサー
風が雪を運んでくる、轟音が恐怖を運んでくる、地鳴りが絶望を産み出す。
四方全てが雪と氷の山脈。
今歩いてきた大地は、春には船を浮かべて釣りでも楽しめるのであろう。
サクソン人の大軍が迫っている。
血に飢えた獰猛な獣達は轟音と地鳴りを響かせながら追って来ている。
対するこちらは多数の民衆を抱えて、これ以上の速さでは進めない。
我々の運命もこれまでなのか、この人知れない山の中でなぶり殺されるのかと、私が絶望していた矢先、剣と弓を手に取り、サクソン人に立ち向かおうとする男がいた。
アーサーだ。
そして、それに黙って続く騎士たち。
この男たちを円卓の騎士と呼ぶらしい。
「何をする気ですか?敵は何百といるのですよ」
彼には、今の私の声が届いていないように見え、その表情はまさに騎士と呼ぶに相応しい。
「たった7人で何ができると言うのです」
私は駆け足で彼の前に立ち、もう一度同じことを言おうとした。
「8人だ」
女の声がしたかと思うと、私の横をグィネヴィアが通り過ぎていった。
彼女の手には弓が握られてる。
今、敵に背を向けている者と、そうでない者とがハッキリと分かれている。
私が大好きなシーンなので、ちょっと文字で書いてみた。
下手の横好きではあるが。
7人が8人になったからどうという事もない状況なのだが、このセリフを吐くのがキーラ・ナイトレイ。
パイレーツオブカリビアンを観たときは特に何も思わなかったが、これをみて好きになりました。
さて、この映画は円卓の騎士で有名なアーサー王の物語……であるらしい。
と言うのもアーサー王は伝説上の人物ではないかと言われるくらい信憑性が今一つなので、いろいろ着色を加えて後世の人々が楽しんでいるという状況だ。
しかし「アーサー」や「円卓の騎士」が実在するのかどうかはともかく「円卓」がクローズアップされているということは、時のローマ帝国は相当な差別社会だったのだと想像できる。
通常の卓の場合は上座と下座がハッキリと存在してしまうので、円形にするとその卓の周りでは上座も下座もなくなり、全員が平等であるという按配だ。
物語としては面白いのだが、如何せん2時間で収めるにはちょっと苦しいかと思う。
展開は駆け足で進んでいくので、あれっ?て思うところが随所にあった。
しかも、時代背景が判っていないと理解できないようなことが、一瞬の映像だけで理解しろよという厳しさだった。
キーラ・ナイトレイ見たさに2回連続で観た私は、この壁をクリアできたが。
当時の兵役制度と、その前線で戦う兵士たちの思いが実によく伝わってくる。
今まで観た歴史系モノの中でもAクラスに輝く作品です。
是非お勧めします。