塩野七生 / ローマから日本が見える

desya2007-05-19

巨匠塩野七生氏。
塩野七生と言えばもちろん「ローマ人の物語」である。

その「ローマ人の物語」をパクスロマーナを築く初代皇帝アウグストゥスの政治改革までの単行本6巻、文庫本16巻までのダイジェスト版。

少し題名と路線がずれているような気もするが、いかにしてローマが成ったかを紹介している。
もう少し、日本や日本史との比較があれば、と思う。

歴史は通史で学習し、また他国の歴史や宗教観、哲学と比較をすることが、楽しむコツであると思う。
ただの丸暗記学問ではなく、小難しいものでもない。
歴史とは人間を学ぶことなのである。


「人間の行動原則の正し手を、
宗教に求めたユダヤ
哲学に求めたギリシア
法律に求めたローマ人
この一事だけでも、これら三民族の特質が浮かび上がってくるぐらいである。」


……このような比較が歴史の醍醐味である。
しかし、ここに日本人を加えて欲しいなと思うのは私だけではあるまい。
あなたが日本人ならば、あなたの行動原則の正し手は何ですか?


「指導者に求められる資質は、次の5つである。
知力。
説得力。
肉体上の耐久力。
自己制御の能力。
持続する意志。
カエサルだけがこのすべてを持っていた。」


カエサルがオール100点だとして、今の自分が何点かを採点してみるのも一興だが、日本の歴史ゲーム的な採点ができないのが明白だろう。
彼が何を考えていたのか、何を成そうとしていたのか、誰に対して、どのように発言したのか、どんな行動をしたのかなど、人間に迫れなければ、この点数はつけられない。
この、人間に迫ることが歴史を学ぶこと、人間を知ることが歴史に学ぶと言うことだと思う。

この「知力」「説得力」「肉体上の耐久力」「自己制御の能力」「持続する意志」で人物評価をすることを、イタリアでは高校で学ぶらしい。
こんな授業を受けてみたいものだ。


ローマ人の物語」に出会えたことは、自分にとって最高に幸せなことだと思っている。
政治、経済、戦略、戦術から、個人のもつ思想や理想に迫れることができる。
特にポエニ戦争を描いた文庫版3巻〜5巻は無類の面白さだった。
読み終わった瞬間にもう一度読みました。
また紹介をしていきたいと思います。