サロメの乳母の話3 塩野七生

サロメの乳母の話 (新潮文庫)

サロメの乳母の話 (新潮文庫)

第3話「ダンテの妻の嘆き」


〜ダンテ〜 世界史小事典より
1265〜1321。イタリアの詩人。もとの名はドゥランテ。フィレンツェ小貴族の出。
ボローニャ大学で修辞学を学び、ラテン文学や哲学の教養を積んだ。
少年時代に出会った美少女ベアトリーチェへの清純な思慕を霊感として「新生」などを詩作。
1295年以来政治活動に入り、ビアンキ党(=白党 大銀行家貴族チェルキ家を頭目とし政権を握っていた)に属し、1300年には政務長官の一人に選ばれた。
1302年ネリ党(=黒党 武家貴族ドナーティを頭目とる野党は、のち教皇のの後援を得て政権をとる)により追放され、ヴェローナ、ポローニャ、ラヴェンナなど各地の小君主の保護を受けつつ「饗宴」「俗語論」「帝政論」神曲などを書いた。
ラヴェンナの君主のためにヴェネツィアに使しての帰途病死。


〜新生〜 世界史小事典より
ダンテの青年時代(1294年頃)の散文まじりの叙情詩集。
いわゆる「清新体」風の清純な感傷をもって理想の恋人ベアトリーチェへの思慕をうたい、近代文学の先駆とされる。


神曲〜 世界史小事典より
ダンテの名を不朽にした長編叙事詩。三韻詩形の100歌からなり、地獄、煉獄、天国の3編に分かれ、各編33歌に地獄編の序章を加えて全体で1423行。
前2編は1307〜13年に、天国編は死の直前(1321年)に完成した。当時のトスカーナ口語で書かれ、初期市民文学の金字塔といわれる。
内容は彼が上記三階をめぐり、歴史や伝説上の諸人物の死後の姿に出会う次第を描き、当時の全知識を網羅して百科事典の観がある。


科学者とか数学者とか芸術家とか、創造、追求に己の全てを捧げる人がいる。
そういう人々の中に、所謂「天才」が生まれる。
人と同じような思考の持ち主では「天才」ではなない。

まあ、天才論は兎も角として、このダンテの奥様は大変な人生である。
上記に出てくるベアトリーチェは妻ではない。
ダンテは結婚してからも、昔惚れていた女性のうたを作ったりしてまして、それは晩年の作「神曲」にも登場する。
その他、出来もしない政治活動に熱くなり、街を家族で追放される。

そんな妻の不安と不満のお話。
しかしそれでも妻からは夫に対する好感がにじみ出ている。
この辺り、まさに女性のフォーカスではないだろうか?

「天才」を夫に持った方にお勧めしたい。


私自身、あまりダンテのことをよく知らないので、つまり次代背景もよく分からないが、すんなり読めて、読後感もホンワカしたものだった。
先の「サロメの乳母の話」とか、「貞女の言い分」は、時代背景が分からないと、ちょっと苦しい感があったが、これは大丈夫です。